西川のベビー布団

ふんわりふわふわ。寝てみて分かる安眠アイテム。

 

西川の布団と言えば、母が昔から何故か西川布団に異常なる程の信頼をおいていて、昭和49年生まれの私も物心がついた時には布団のタグは「西川」だった。

 

 

両親の布団は勿論のこと弟の布団も西川、祖母の家の布団も西川、私や弟が結婚した時にも当たり前の様に夫婦布団も西川の物を風の様に送り付けて来たものである。

 

 

その後の人生においても私に子どもが産まれた時、西川のベビー布団を嬉しそうに抱えて来た母がいた。

 

 

そんな流れで西川が家族みたいになっていたある日、孫=私の子どもが「プーさんのこのお布団が欲しい」と百貨店売り場で騒ぎ出した事があった。

 

 

「うーん、西川じゃないとなぁ…」と渋る母。

 

 

「やだやだ、プーさんのが欲しい」と駄々を捏ねる孫。

 

 

約十分程の大人気ない押し問答の末、奇跡的に母が折れプーさんの何だか訳が分からないメーカーの布団を購入する運びとなった。

 

 

あー、とうとう西川が私の家から去っていく日が来たなぁ、などと感慨深く思ったのが昨日のようである。

 

 

 その後布団に関しては特に「西川」と指定して来なくなった母であったが、一緒に寝具売り場に買い物に行く度にサンプルとして置いてある西川布団をさりげなく掌でサワサワ触ったり、それを見つめる私に何か言いた気な上目遣いで無言で「に、し、か、わ」と伝えて来たが、あえて無視を決めた。

 

 

私からしてみたら、昔から合言葉の様に聞かされて来た西川だったが、何せお値段が高い。

 

 

大学まで出さなくてはならない子どもの事を考えても、そう何度も布団なんて買っていられない。

 

 

それを年金暮らしとなった母も、心の何処かでは感じているはずだった。

 

 

そして西川を完全に忘れていたある日、私は発見してしまった。

 

 

実家のケンケン吠えまくる、躾も全くなっていないミニチュアダックスフンドのチャコと言う名前のペットの布団が、西川になっていた。

 

 

チャコは西川の有り難みも当然分からぬアホ犬だったので、最後にはあの西川が見るも無残なボロ雑巾のように噛み砕かれた様を目の当たりした。

 

 

それでもやっぱり母の中ではどうしても西川は譲れないのだと、改めて思った。

 

 

お母さん、安心して。

 

 

子どもが独り立ちをしてお金が掛からなくなったら、必ず布団を買ってあげるからね。

 

 

寝る時も、これから必ず訪れるであろう最期の時も、絶対「西川」、だよね。

 

 

母をここまで感動させてくれる西川布団さんに、心から感謝の意を。